【本の感想】デイヴィッド・フィンケル『帰還兵はなぜ自殺するのか』




デイヴィッド・フィンケル『帰還兵はなぜ自殺するのか』


ピュリツァー賞作家が「戦争の癒えない傷」の実態に迫る傑作ノンフィクション。内田樹氏推薦!

本書に主に登場するのは、5人の兵士とその家族。
そのうち一人はすでに戦死し、生き残った者たちは重い精神的ストレスを負っている。
妻たちは「戦争に行く前はいい人だったのに、帰還後は別人になっていた」と語り、苦悩する。
戦争で何があったのか、なにがそうさせたのか。
2013年、全米批評家協会賞最終候補に選ばれるなど、米国各紙で絶賛の衝撃作!

「戦争はときに兵士を高揚させ、ときに兵士たちを奈落に突き落とす。
若い兵士たちは心身に負った外傷をかかえて長い余生を過ごすことを強いられる。
その細部について私たち日本人は何も知らない。
何も知らないまま戦争を始めようとしている人たちがいる。」(内田樹氏・推薦文)



アフガニスタンとイラクに派兵された兵士は200万人。
そのうち50万人がPTSD(心的外傷後ストレス障害)と
TBI(外傷性脳損傷)に苦しんでいる、という。


PTSDはよく聞くけど、TBIは初めて聞いた。
ボクサーとかがなる病気だというけど、近くで爆発などがあったときに、
脳が頭蓋の内側とぶつかり、あとから、記憶や認知に問題が出てくるらしい。


この本には、主に、5人の兵士とその家族が出てくる。
うち一人は戦争で亡くなり、妻がその後3年たっても夫を想っている姿が出てくる。
いっそ、思い出はきれいなままなほうが幸せだったのではないかと、
生き残って壊れて戻ってきた兵士たちの生活をみると思うほど、
彼らの生活は悲惨になっている。


たとえばアダム。
イラクに3回行き、3回目で壊れて戻ってきた。
見た目はどこもおかしくなくても、口の中には常に背中に背負った運んだ
戦友の頭から流れ出る血の味が残り、毎晩悪夢を見て、
妻とは毎日怒鳴りあう。
自殺未遂も起こしていて、そういう兵士のためのプログラムに参加している。


その妻も、精神が不安定になっていて、
アダムが4か月も家を離れてそういうプログラムに行くとなると
経済的な問題が心配で起こり、1日に50回もメールして、「帰ってきて」と言い、
アダムが実際に帰ろうとすると、今度はアダムが自殺してしまう、と止めようとする。
やっていることが支離滅裂。
妻も、おかしくなっている。


トーソロは、イラクで乗っていたハンヴィー(こういう車↓)が爆発する。

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その時、一緒に乗っていた何人かは助けたけれど、
1人は助けることができず、彼の焼けた死体が目に焼き付いて、
離れない。
そして、爆発のとき、脳に受けた衝撃で、ろくに物を覚えられなくなる。
いつも、びっくりしたような顔をして、人の言うままに動こうとするけど、
「なぜそれをしなければならないのか」がわからない。


そして、妻を殴り、DVで逮捕される。
でもなぜ殴ったのか、わからない。


そんな例ばかり。
PTSDになる理由は、罪悪感、ということらしい。
現地で自分がモンスターのようなことをした、
戦友のだれだれを助けることができなかった、
自分の代わりに別の戦友が死んだ、
そういうことが頭から離れずに、壊れていく。


行く前は優しかった夫たちが、壊れて帰ってきて、
今度は家族を壊していく。
妻を罵り、殴り、家に穴をあける。
怒りが、抑えられなくなるようだ。
そして、自殺していく。


それが繰り返されていることが怖かった。
兵士たちや妻たちの周りには、兵士だった父や祖父がいて、
ベトナム帰りだったりして、やっぱり壊れていた。
でも当時はそれがPTSDだということはわからなかったようだ。
ただ、父が自分を殴ったり、祖父が一言も口を利かなかったりしていた。
そういう例がそばにいたのに、彼らは兵士になったのだ。


重い話だった。
でも現実で、だから、どうなるのかが気になって気になって、
一気に読んでしまった。
彼らはこれからどうやって生きていくんだろう。
どうやって生きていけというんだろう。
あまりにつらい現実だった。






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