【本の感想】田丸 公美子『シモネッタの男と女』

台所にある本棚は、夫が作ってくれた。
とっても気に入っている。
でも空いていると埋めるくせがあるので、読みたいとおもう本を買っては
読まずに積んでを繰り返していたら、ごちゃごちゃしてきて、
ちょっと片付けたらどう、と言われた。


片付けるので本棚から取り出して、ぺらっと読みだしたら、とまらなくなった。
ということで、最近、積読本の消化をしている。
おもしろい本をこんなに積んでいたとは。もったいない…。





田丸 公美子『シモネッタの男と女』



縁は伊なもの?イタリアで日本で、著者が出会った忘れえぬ男女―“
シモネッタ”がとらえた人間劇場のユーモア&ペーソス!盟友・米原万里に捧げる感涙の追悼エッセイを収録。



著者はイタリア語通訳者。
下ネタ好きなので、「シモネッタ」という称号を持っている。


ぺらっと見て、やめられなくなった。
だって、しょっぱなから、エルコレという、ギリシャの彫像のような美しい男が出てきて、
イタリアでは結婚前に、この結婚に意義があるものは申し出よ、
という広告を新聞に出すのだそうだけど、エルコレはそこに故郷の金持ちの娘の名を見つけ、
完全なる金目当てで「結婚に意義あり!」と言いに行き、狙い通り、その娘と
結婚したという、そんなことから話が始まるんだもの。


その金持ちの娘はそれはそれはブサイクで、
エルコレは、もちろん、浮気を繰り返す。
挙句の果てには娘をもうけ、それを機に奥さんとは離婚。


一時は事業がものすごくうまくいってビバリーヒルズにも店を出し、
もちろん日本とのビジネスもあり(だから通訳である著者とも知り合っている)、
高級車を乗り回す生活をしていたのが、あるときから事業もうまくいかなくなり、
会社は失い、年をとって太って昔の面影もなくなったエルコレを最後に拾ったのは奥さんで、
今では二人で暮らしていて、近くに住む孫は学校が終わると寄るという。


そんな人生模様を何十ページかで見せられる。
ほかには、ローマの老舗の跡継ぎのクララ、イタリア人の女性をとりこにしまくった日本人の男、
エステで富を築いた女王のようなカルラ、マッチョの代名詞のようなジョヴァンニ。


どの人もスケールが多きく波瀾万丈で、
浮いて沈んで、大忙し。
でも最後はなんだか、みんな、寂しくなっている…。
人のゴシップを見るおもしろさが、最後にはサビシイ思いに捉われる。
実際の人たちのことだから。


でも最後の一人にはびっくりした。
米原万里のことだった。
二人はとっても仲がよいというのは知っていた。
米原万里の本を読んでいて、この作者を知ったから。
でも、彼女について、著者が書いていたとは知らなかった。


米原万里の死後書かれたこのエッセイは、米原万里への愛情と
彼女を失った寂しさであふれている。
米原万里がどれだけすごい人だったか。


美貌、身長、体重、バストの大きさなどの外見はもとより、料理の腕前、
文才、知識、教養、交友関係、洞察力、収入、そのうえ、彼女が二けたと
豪語していた「寝た男の数」に至るまで、私が彼女に太刀打ちできるものは
何一つなかったのだ。


と著者はふざけたように書く。
著者と米原万里、それからほかの3言語の通訳5人で、
定期的に集まっていた会も、米原万里がなくなってから自然に
解散したのも、結局みんな、米原万里の魅力に取りつかれていたからだ、と。


ほんと、実際、米原万里の本を読んでいれば、
なーんて頭のいい人だろう、なーんて思い切りのいい人だろう、
なーんて知識のある人だろう、って尊敬するしかできない。


でもここで、年収5千万だったとか、
衣装代は800万だったとか、
「ジェンダーに関するこの本の書評は米原さんがいいんじゃないかしら」
と、とある女権論者に推薦されたとき、
「辞退します。私、ジェンダーよりセックスのほうが好きですから」と
答えたとか、そんな話が出てくると、私は興味津々になってしまう。


たいへん興味深く、
そして、最後は泣かされました。

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コメント

No title

私、米原万理さん大好き。
シモネッタ?米原さん?と、来るくらい。
今度、田丸公子さんの本を探してみます。
ご紹介ありがとう。

2017/01/20 (Fri) 21:59 | きのこ #- | URL | 編集

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