【本の感想】イーユン・リー『千年の祈り』



イーユン・リー『千年の祈り』


ンク・オコナー国際短篇賞、PEN/ヘミングウェイ賞ほか独占。驚異のデビュー短篇集!

離婚した娘を案じて中国からやってきた父。その父をうとましく思い、心を開かない娘。
一方で父は、公園で知りあったイラン人の老婦人と言葉も通じないまま心を通わせている。
父と娘の深い縁と語られない秘密、人生の黄昏にある男女の濁りのない情愛を描いた表題作ほか全十篇。
北京生まれの新人による全米注目の傑作短篇集。



すごくよかった。


短編集なんだけど、短編と感じられずに夢中に読んでしまう濃さを、
どのお話も持っていた。


その中でも特に、『不滅』は圧巻だった。
街が語りの主体としてあって、その街が常に尊敬されるべき宦官を輩出してきたこと、
それが毛沢東の死後、彼の身代わりとして生活した男の少年時代から、
彼が母親の墓の前で身を清めるまでを書き、それが物語の出だしと見事にリンクする。
中国の長い歴史の一端を垣間見せられたよう。


ほかにも、
50を過ぎて初めて、生活のために結婚した女性の初恋、
恋人に裏切られて10年、市場で約束を守る男に出会う女性、
離婚したアメリカに住む娘の元にきて、そこで言葉の通じないイランの女性と出会い、
言葉が通じ合わないながらも通じたような気持ちになる男性、
息子を殺されたことを恨み、17人の役人を殺して死刑になった男の友人たち、
年齢も性別もさまざまな登場人物たちの物語が、淡々と語られる。
感情移入しないところが、こちらに想像の余地を残してくれる。


表面的な人物像が、話が進むにつれ、過去のことが明らかにされ、
深くなっていく。
そして、中国という国と、人を少しわかったような気持ちになる。


中国というと、文化大革命のイメージが強くて、ドロドロして悲惨で暗い
印象を持っていたのであまり読んでこなかったけど、この短編集は、それとはちがう。
物語の舞台がアメリカだったり、アメリカ帰りの人がいたりするかもしれない。
もちろん、明るくって爽やか、というものとは程遠いけど、
意志を持った人間がそこでちゃんと生きていることが伝わってくる。


著者は、大学院で初めて渡米している北京生まれの人。
中国語だと自己検閲を入れてしまうのが、英語で書くことで、
自由に書けるという。
もしかして伝わってきたのはその自由に書ける喜びなのかもしれない。
なんだかとてもよかった。



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